ピックアップセレクター


フランケンのセンターピックアップ位置に鎮座しているピックアップセレクター。
弦の下にあるので操作できるはずもなく、実際の固定状況を見るとセレクターノブは動きすらしない。
エディ本人は、そこに隙間があったから付けてみた。みたいに言っているが
情報操作の激しい彼にあっても、これについてはまんざらでもなさそうだ。

ただ、全く同じ80年前後のセレクターを付けることは難しい。

なぜなら、

CRL社はセレクターに使っている端子取り付け基板を紙フェノール樹脂からガラスエポキシに
変更してしまったからだ。(臭いの問題により、米国では紙フェノールが使われなくなった)
ちなみに、50年代初期のテレキャスターのピックガード基材も、この紙フェノールだった。
EVHフランケンレプリカを作ったチップエリスも、現在このスイッチは作られていないと言っているが
CRL社がスイッチを辞めたわけではないので、この違いだと思われる。

但し、国産品として流通しているセレクタースイッチは紙フェノールだ。
しかし!!

●端子の取り付け位置が違う
●金属プレートの形状が違う
●何よりも、ノブ取り付け部の幅が違う

の相違点があり、極める為にはそこを解消しなければならない。

そこで、80年代のCRLセレクターを再現したいと思う。
幸い、セレクターとして機能させる必要はなく、あくまで外観の再現だ。

目指すセレクター
これが1979年製のCRLセレクタースイッチの本物である。
私の所有するストラトを撮影したので、当時のスイッチのまま交換されていない事は明白。

端子の付けられた茶色い板。これが紙フェノール基板だ。
左が現在国産品として手に入るセレクター、DM-50。まあこれはセレクターとして
どこにでも売っている。

右は現在売られているCRLのセレクター。
基板がクロスに編み上げたガラス繊維をエポキシ樹脂で固めたガラスエポキシ基板で、
色が白っぽい。

ちなみに、
電子機器の基板がガラスエポキシであっても緑色等になっているのは、プリント基板上の
配線をしている銅箔を、はんだ付けする部分以外をマスクするために印刷している
レジスト印刷の色だ。
レジスト印刷が無ければこの生地の色になる。
DM-50とCRLでは、ノブ取り付け部の幅はこの様に違う。
ストラトのセレクターノブを交換したことがある方ならこの差はご存知だろう。

ノブの裏をよく見るとスリットが十文字になっていて、長いほうがCRL用、短いほうが
国産用の挿入穴という兼用ノブになっている物もある。

国産セレクターに無造作にCRL用スリットのノブを取り付けるとグラグラと抜けそうになるので、
そういう症状がある方は見直してほしい。
セレクターの作成 CRLのセレクターを紙フェノールにする。
ニコイチで合体させる作戦だ。
まずは基板を留めているハトメを外す。
ニッパーで潰しても良し、
ドリルで揉んで「返し」を切り取っても良し。
ハトメを2個外すと基板がスッポリと抜ける。
これを左右入れ替えれば基本的には良い。
上の写真で比べるとわかるが、端子用の穴が国産には2か所足りない。
両端から2番目の穴が左右それぞれに無い。

ドリルで穴を追加する。φ1.5あたりで良い。
基板を入れ替えて再び固定する。
固定穴位置が違うので、固定穴の空けなおしが必要。

固定に使用するのは2x3.5mmハトメ、Amazonにて調達可能だが、
カシメ治具は専用を買うと5000円くらいかかってしまう。
手持ちの工具でそれぞれ工夫して頂きたい。

私は穴あけ用ポンチで仮に広げてから、真鍮棒を加工してカシメ治具を作った。
ちなみに、このハトメはシングルコイルピックアップの端子にも使える。

写真は両方ともCRL。基板の色が違う2種類ができた。

しかし注視してほしい、端子の位置が穴ひとつづつズレている事が判る。
とりあえず現在付いている端子を全て外す。
ドリルで「返し」を揉み取ってしまう作戦だ。
全ての端子が外された状態。
端子を固定するのに用意したハトメは、ミニハトメ1.5X3.5。
これもAmazonで購入できるが、治具は同様に工夫が必要だ。

写真は間違えて1.5X2.5を購入してしまったが、径はこれで間違いなかったことが確認できた。
端子を全て取り付けた状態。

カシメが少し汚い部分もあるが、今回は正しく機能させる必要が無いので、初トライとしてご勘弁頂きたい。

そしてすでにレリック加工が(途中から)なされている。
この後、端子にも若干加工される。
そして元に戻って1979年のCRL。上の作成品と比較してほしい。

うまく再現できたと思う。

両端の穴がよく見ると足りないが、この後に修正となる。